プログラミング教育において日本はかなり後発
小中学校で「情報」という科目が取り入れ始めて早数年が経過し、パソコンの使い方だけではなく、論理的思考を育てるための「プログラミング」の要素が2020年より各授業に含まれると話題になっております。
多くの先進国では、この「プログラミング」学習は低学年から選択科目であり、既に馴染みのある科目の1つです。
2016年、元アメリカ大統領のバラク・オバマ氏は、テクノロジー教育として40億ドル(約4500億円)の教育予算を割り当て、アメリカ経済を回復させる戦略として導入されました。その支援政策には、Apple、FacebookやMicrosoftなど多くの大企業が参加しています。
深刻なエンジニアの不足
経済産業省が試算するITエンジニアの大幅な人材不足はとても深刻なものとして衝撃を与えました。IT人材の需要は上昇する一方、人材不足が問題となっています。
2019年では、「26.8万人」。2025年では「42.9万人」、2030年では「59万人~79万人」のIT人材が不足すると推測されています。
アメリカの現状では、高給料のお仕事が60万人分あるのに対し、良い人材が見つからずに募集枠のみが残っている状態です。
現在もっとも世界で不足しているAI人材は100万人に近いと推測されており、アメリカ・イギリス・中国では、この問題に対し、政府レベルでの人材育成を目指しています。
教育、仕事現場で大きく後退している日本のICT事情
2020年4月現在、世界は感染症の影響により在宅ワーク、ディスタンスラーニング(自宅からのオンライン学習)が求められています。海外の先進国では通常通り授業がオンラインで行われています。
日本のICT事情は大きく遅れをとっており、小学校や中学校ではオンライン授業の準備や以降に遅れをとっています。学校教育だけではなく、在宅ワークへの移行にもスムーズに切り替える事が出来ていません。そのため余儀なく出社が求められています。
各国のプログラミング教育の現状
各国のプログラミング学習状況をみてみましょう。ヨーロッパ諸国では5年以上前からプログラミング教育に力を入れている様です。日本を除くアジア周辺でも以前から教育に力を入れている様です。

英国
英国(UK)では、2013年に「Computing」が新設され、2014年から実施されています。この科目は、コンピューターサイエンス、情報技術、デジタルリテラシーで構成されており、アルゴリズムの理解やプログラムの作成、論理的推論による予測、情報技術を安全に使うための学習が実施されております。一般的なプライマリースクール(初等教育)では1週間に1時間~2時間の学習時間のようです。

エストニア
2012年よりプログラミング教育プログラムが開始されており、ロボットプログラムやゲームプログラムを用いて興味を持たせる活動をしている学校(初等教育~中等教育前半)が多い様です。中等教育の後半では、Python、Javaなどのプログラミング言語を用いて学ぶ授業が選択科目としてあります。

イタリア
「これからの世代が生活するために必要不可欠である」と考えられており、2014年9月より初等教育からプログラミングを導入しました。「プログラマーを育成するのではなく、現代社会を理解するため、基礎を広める事にある。情報技術の原理を理解することは重要な事である」とされています。教育省と大学研究機関の連携により初等教育からプログラミングが取り入れられております。

ロシア
ロシアでは、初等教育から中等教育(16歳)までICT授業を2009年より必修化されています。IT技術は「自然科学、社会学、経済学、文学」などのプロセスを理解するためのヒントになるとされており、また「数学、物理、科学、生物学」においても世界観の基礎を構築できるとされております。不可欠要素の1つとなっています。

カリフォルニア(米国)
一部の初等・中等教育において実施されており、独立の科目として設定されている学校もあります。カリフォルニア州では、IT産業の拠点「シリコンバレー」が存在するにもかかわらず、高等教育においてIT分野を専攻する学生が少ないことが問題となっており、必修化に向けて検討されております。カリフォルニア州としては職業の需要はあるが、州としてはそれを満たすことが現状できていません。しかしながら、米Apple社やその他超大規模企業による支援が盛んに行われており、高等教育の現場ではかなり進んでいます。

カナダ
カナダのオンタリオ州では、2009年より12年間の義務教育機関のうち、3年間プログラミングが選択科目として導入されています。高校1年生では「コンピューターの基礎」、2年生からプログラミング学習がスタートし、3年生では高度な「オブジェクト指向プログラミング」の学習をします。また初等教育でも課外授業としてHour of Codeを取り入れています。

韓国
おとなりの韓国では、比較的早くから情報教育の必要性が主張されており、1970年代より導入されております。中学校へは1987年から導入されており、現在までに改訂され続け今のプログラミング教育へと大きく変化しています。2005年よりICT授業が改訂され、初等教育でも「プログラミング教育」が本格的にに導入されました。2010年代では「コンピューテーションシンキング(コンピューター的考え方)」が導入され、実社会に役立てられることが目的とされるようになりました。初等教育では、ICTリテラシー教育を中心とした授業が必修科目とされており、中等教育では、スクラッチを用いてプログラミング言語などの概念を理解することを目的とされております。高等学校からは選択科目として用意されており、Pythonなどのプログラミング言語が扱われています。

シンガポール
シンガポールは早くから情報通信産業を国の基幹産業と位置付け、90年代からITインフラを教育分野に導入しました。2000年代初頭には、日本でこれから始まろうとされている内容が進められ、効果的に広くICTを教育で利用しました。シンガポールではプログラミングの授業は必修化されておりません。これは既に必修化にする必要がないほど浸透している証拠なのかもしれません。

香港・中国
香港の教育カリキュラムでは、中学校、高校共にテクノロジーエデュケーションが必修化されており、プログラミング教育を含めたICT教育を授業で行っている。小学校ではプログラミング教育はされていないものの、情報リテラシーが中心の授業を行っている。中国全体ではSTEM分野の学士号を習得した学生は世界1位の470万人になり、2030年には20%増加する予測もあるようです。AI・モバイル領域で世界を牽引する企業もあります。

インド
近年ではIT大国としても知られているインド。2016年のインドにおけるSTEM分野の学士号を習得した学生は世界2位となる260万人になりました。初等教育のプログラミング教育は2005年に数学の一部に取り入れられました。現在ではICTのカリキュラムとして2013年より初等教育後半から中等教育において、プログラミング教育を含むICT教育が実施されております。

イスラエル
イスラエルでは1970年代からコンピュータ教育の必要性を認識し、高等学校でのプログラミング教育が始まりました。その後、コンピューターサイエンスとして1990年に置き換わり、物理や化学などと同等の科目として教えられています。「アルゴリズム的思考を開発し、アルゴリズムをプログラミングで実装する」ことを目的とされており、1991年から高等学校で導入されております。

オーストラリア
プログラミングやコンピューターサイエンスを学ぶ授業を8歳から13歳において必修化されています。英国と同様に2014年からスタートされ、すべての国民に情報社会や未来社会に生きる知識や技術の教育を行っています。国語や数学と同様に、デジタル技術という学習分野が用意されています。

ニュージーランド
2011年より中等教育を対象に「デジタルテクノロジー」の教育を開始しました。この中にプログラミングの内容が含まれておりますが、必修ではなく、指導者の裁量により左右されているようです。学習内容は「アルゴリズムの理解、符号化(圧縮)、暗号化、人工知能など」です。簡単なプログラミングから初め、高度な知識を積み上げていきます。

日本
2020年より本格的にスタート。各科目の中でプログラミングの要素を含めた内容を学習。コンピュータを使わないプログラミング学習がメインとなる。開始間近にも関わらず明確には決まっていない。ITに詳しくない先生・保護者は不安になっているのが現状。そして中学校で習う英語は、小学校で習うことになります。日本の小学校では1人の先生がすべての教科を教えていますが、はたして本当に意味のある教育になるのでしょうか。
プログラミング教育の課題と今後
現状のプログラミング教育において、どの国にも共通した課題があります。それは「プログラミングを教えられる人材がいない」ことです。物理や技術など他教科の教員が教えているのが現状です。これは2020年から始まる日本での教育にも同じ事が言えるでしょう。
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プログラミング教育が始まろうとしている今。2020年以降は「プログラミング教育の質」にも重要視されるのではないでしょうか。
- せっかく通うならしっかりとした先生に教えてもらおう
- 教材はなにを使っているのかな?テキストを見せてもらおう
- 入会する前に必ず体験教室に参加しよう
子どもの将来を左右する可能性もあるはじめてのプログラミング学習だからこそ、最初の教室は慎重に選びましょう。
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